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医師のコミュニケーション能力

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医師のコミュニケーション能力

私は幸い良い医師とめぐりあえましたが、そうではない患者は、医師不審に陥り、がん難民になってしまうこともあります。医師のコミュニケーション能力はとても大事ですが、医療界ではまだ一部の医師しか、手法を学んでいません。このあたりはこれからの課題だと感じています。

 

つらさ和らぐ医師の姿勢(2015年2月号掲載)

私は検診で要精密検査になって近くの専門クリニックを受診し、3ヶ月後にがん告知を受けましたが、その間、比較的心穏やかに過ごすことができました。それは良い医師との出会いがあったからです。

クリニックの担当医師は、検査の意味や結果をその都度丁寧に説明してくれたので、私は一つ一つ理解しながら進むことができました。そして疑いが濃くなると、がんについても説明してくれました。

「どんどん大きくなって転移していく悪性度の高いものではないのでまず安心してください。疑っているものはおとなしいタイプのがんで、ゆっくり進行するものですからね」という医師の言葉は、ざわついていた私の心を静めました。

人はよくわからない状況に置かれると不安が高まります。検査期間が長引いても、適切な説明を受けながら進むと、患者の心は落ち着いていきます。

そして最後はたくさんの組織を取るマンモトームという検査をやらなければ判定できなくなったので、「ここまできたらやる方がいい」という医師の助言もあって、検査機器がある大きな病院を紹介してもらいました。

次に行った病院でも良い医師(今の主治医)に出会います。ここで私はがんの告知を受けたのですが、この先生なら治療を託せると思えたのです。

紹介病院は急性期医療を担う地域の基幹病院のため、予約を取っていても待たされることが多いのですが、告知を受けた日は、時間通りに呼び出されました。診察室には普段はいない看護師も待機していて、ドアにはカーテンも引かれ、普段とは異なる空間になっていました。

軽く言葉を交わしたあと、静かに「がんでした」と告げられます。私は続く説明を聞きつつも、机の上に置かれた病理検査の結果が気になり、書かれている文字を追っていました。結果、ずっとうつむいた状態だったため、医師は「大丈夫ですか?」と私の顔をのぞきこむように優しく尋ねてくれました。その時初めて自分が下ばかり向いていたことに気付いたのですが、患者の様子を見ながらの、ゆっくり間を取った説明は、がんのショックを和らげました。

後から聞いたのですが、主治医は患者とのコミュニケーションを学ぶ研修を受けたことがあるそうです。厚労省の研究班がまとめた調査でも、こうした研修を受けた医師が担当した患者は、心のつらさが和らぐという成果を挙げています。

がんという誰もがショックを受ける病名の告知には、本来スキルが必要ですが、そこは医師の資質任せになっているのが現状です。そのため一般診療と同じ感覚で行う医師も多く存在します。「パソコン画面を見たまま告げられた」などという声を聞くと、普段の診療姿勢にも疑問がわきます。

医療には医師と患者のコミュニケーションが欠かせません。こうした研修は単に手法を学ぶだけでなく、自分流になりつつある日常の診療姿勢を見直す場にもなります。一般化されて、コミュニケーション技術を身につけた医師がもっと増えることを願います。

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