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患者の心を溶かす相談窓口

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今回は患者の心を溶かす相談窓口の話です。

「がん相談支援センター」をご存じでしょうか。がんに関する情報の提供や、悩み解決の手助けを行っているところです。専門の看護師や医療ソーシャルワーカーなどが対応しています。

全国の「がん診療連携拠点病院」などに設置されていますが、その病院にかかっている、いないに関わらず、誰でも無料で利用できます。

とはいえあまり知られておらず、利用者は少ないのが現状です。私も興味はあったのですが利用したことがなかったので、神戸市の中央市民病院にある、がん相談支援センターをのぞいてみました。

ブラウンの落ちついた部屋に入ると、さまざまなウイッグが目に入ります。爪に優しいマニキュアやボディケア用品、そしてがん患者向けの本なども置かれていて、展示品を眺めたり触ったり、ゆっくり座ってがんに関する情報を見たりできる空間になっています。

訪ねた時は相談者もなく、看護師の橋本さんにお話を伺うことができました。

がん相談支援センターは電話での相談も可能で、橋本さんによると、今のところ電話相談が多いとか。相談の中身は、薬や食事、代替医療や就労問題などさまざま。中には、ただ聞いてほしい愚痴のようなものもあって、まさにがんのよろず相談の場になっています。

患者同士の交流も大切にされていて、「がんサロン」や「がん市民フォーラム」なども開いています。センターにふらっと来て過ごしていくという方はまだ少ないですが、将来的には、訪れる人同士をつなぐこともできればと話しておられました。

具体的な相談内容やセンターが行っているアドバイスを伺いましたが、いずれも「なるほど」と思うことばかりでした。

たとえば病院を変えたい、主治医を変えたいという相談では、なぜ変えたいと思うのか、その原因を探ります。その上でどうすればうまく医師とコミュニケーションを取れるのかを、まずはアドバイスするといいます。病院や医師を変えるのはあくまでも最後の手段にしているそうです。

私も仕事柄、コミュニケーションに関する講座を担当することがありますが、確かにどこに問題があってうまくいかないのかをしっかり見極めないと、根本的な解決にはならないものです。要因を掘り下げることなく、単純に主治医を変えるだけでは、また同じことが起こりかねません。

そして就労問題。患者はどうしても元気になってから戻りたいと思いますが、橋本さんは元気になるために戻るのだと伝えるといいます。また復帰にあたっては、職場に対して希望ばかりを主張するのではなく、「私はこれができます」と、できることを伝えることもアドバイスするそうです。

これを聞いて、私もその通りだと思いました。治療には長い時間がかかる上、私もそうですが、病気前の状態に戻ることなどそもそもありません。みな何がしかの不調を抱えながらも、その中でやれる範囲で社会に戻っていくのだと思います。こうした考え方の切り替えは、仕事復帰の上で本当に大事だと思うのです。

また復帰に際しては、患者側と企業側がきちんと理解し合うことも大前提になります。こんなはずじゃなかったということがないよう、事前に意見交換を行わなければなりません。そのためにも、できることもしっかり伝える必要があるのだと思います。

橋本さんの話を聞いていて、最も印象に残った言葉は、「患者さんの心を溶かす」でした。患者は多かれ少なかれ、「こうあるべき」や「こうしなければ」など、思い込みにとらわれているところがあります。そしてそれが問題解決のネックになっていたりします。「こうしたらどうですか?」という単なる解決策の提示だけでは、解決につながりません。患者の固くなっている心を溶かすことは、相談窓口にとって重要な役目なのだと思います。

センターは、悩みを相談し、情報をもらう場ながら、大事な気づきも得ることができるところだと実感しました。こうした場があることを、もっと多くの人に知ってもらい、利用者が増えればいいなと思います。

まだ足を運んだことがない方は、ぜひ一度訪ねてみてください。国立がん研究センターがん対策情報センターのサイト「がん情報サービス」で、近くにあるセンターを探すことができます。チェックしてみてください。

 

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