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がんについての理解 そしてがん患者への誤解をなくすために

がんなのに運動するわけ

time 2017/08/10

がんなのに運動するわけ

「えっ!がんなのに運動してもいいの?」。これは乳がんを告知されたあと、せっせとジムに通って運動していた私に、友人が言った言葉です。

手術の日が決まってから、できるだけ体力をつけようと、それまでさぼり気味だった運動に精を出していました。かつて入院でかなり体力を落とした経験があったので、「入院すれば体力が落ちる」その思いだけでやっていたのですが、手術など治療前の運動は、患者にとってプラスになるというエビデンス(科学的根拠)があることを、あとから知りました。

先日参加した臨床腫瘍学会で、慶応義塾大学病院 医学部腫瘍センターの辻哲也さんによるセミナー『がんのリハビリテーション』を聞いたからです。

辻さんの、がんと診断されたあとすぐから始まる「予防的リハビリ」の話は、私には新鮮でした。と同時にがんのリハビリについては、知らないことが多いことにも気づきました。そこでセミナーのあと、辻さんが編集にも携わられた、2013年発刊の『がんのリハビリテーションガイドライン』も読んでみました。

それには、「乳がん患者において診断時から身体活動量が減少し、治療中・治療後には倦怠感などから活動量がさらに低下し、心肺機能や体力の低下がみられることが報告されている」そして「心肺機能や体力の低下は倦怠の原因になり、さらに活動量を低下させるという悪循環を呈する」とあります。

医療者向けのガイドラインなので言葉は堅いのですが、がんと診断されると、活動量が減り、そのことでさらに活動が減る悪循環が起こるというのです。ですから診断時から毎日、歩行など中程度の運動をすることが推奨されています。私が手術前にやっていた運動はよかったわけです。

さらに運動は体力面だけでなく、精神面にも良い効果をもたらします。

「乳がん術後の化学療法・放射線治療中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと抑うつや不安感、感情や気分、睡眠障害を改善させる」とあり、治療中の運動療法も推奨されています。治療中はできるだけ体を労るほうが良いイメージがありますが、逆に適度に体を動かすほうが精神的にも良い効果があるのです。

がんにおけるリハビリはここ10年で大きく発展してきました。研究が進み、治療によって低下した機能の改善から、心のケアまで、様々な効果があることがわかってきたからです。

リハビリというとこれまでは、治療後、合併症がおこって初めて取り組むものとされていましたが、今や治療前のトレーニングから終末期の生活を支えるものまで、広く取り組んでいくものとなっています。

2010年には、がん拠点病院などに「がん患者リハビリテーション科」もできて、入院中のリハビリが保険適用になるなど着実に進歩してきました。とはいえまだ課題もあります。

一つは外来リハビリが保険適用になっていないことです。リハビリは入院中だけでなく、退院したあとも継続することで効果が高まります。外来でのフォローアップはとても重要です。がん拠点病院などでは独自に工夫して取り組んでいるところもありますが、その数は4分の1程度。効果的な外来リハビリプログラムは現在開発中なので、これが完成して、保険も適用されれば、外来リハビリを行う医療機関も増えていくのだと思います。

もう一つの課題は患者のリハビリに対する認識の低さです。手法は専門家に学ばなければいけませんが、実際に行っていくのは患者自身です。それなのにがんのリハビリ情報はまだ患者に十分届いているとはいえません。今後一般向けのガイドラインも出る予定なので、患者もガイドラインを参考にするなどして、リハビリの大切さを知る必要があります。

ちなみに医療者向けの『がんのリハビリテーションガイドライン』はWebで見ることができるので興味を持った方は、一度見てみてください。

がんのリハビリの発展の歴史は、がん治療が患者本位にシフトしてきた歴史でもあります。「がんは切り取ればそれでよし」とする、治療だけが重視された時代から、回復したあとの患者の生活にまで目を向ける時代へ。リハビリの発展はその証ともいえます。

辻さんは「リハビリは患者ができるがん治療」と話しておられました。うまく利用して「自分の心と体を自分で整える」という概念が広がっていくと、がん治療もさらに一歩前進するのではないかと思います。

 

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さかゆうプロフィール

さかゆう

さかゆう

しゃべり手 たまに書き手。 ネット問題に取り組む消費生活アドバイザーでもある。母親を希少がんで亡くし、自身も 2014年に乳がん発覚。手術を行い 現在経過観察中。