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質問力はあるのに聞けない

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質問力はあるのに聞けない

患者の質問力について、「質問力とネット窓口」で書きました。このコラムは、自分の治療や病状についてうまく質問ができない人へ向けて書いたものですが、今回は、質問力がある人にも存在する、聞けない壁についてです。

一つ目は、医師の態度という壁。一通り説明すれば終わりという、こちらの理解度などお構いなしの医師は残念ながら存在します。こんな一方的な態度の医師なら、闘うエネルギーを考えると、担当医を変えることに力を注ぐ方がいいのかもしれません。

一方、一応説明後に「質問はありますか?」と聞いてはくれるけれど、質問すると、短い答えが返ってくるだけで、重ねての質問がしにくい医師も案外多いものです。診療時間を意識しての対応かもしれませんが、この場合、もう終わりという空気に負けずに質問を重ねるのは、これまたしんどいことです。

こんな時は、この先も長く付き合うことを考えると、どこかで患者も頑張らなければいけません。どうしても重ねて尋ねられない雰囲気ならば、次の診察時に覚悟を決めて、「今日は前回抱いた疑問がいくつかあります」と初めに宣言してしまうというのも一つの方法です。いま一つかみ合わない相手の場合、先んじて自分から問いかけ、自分のペースに持っていくと話しやすくなったりします。

患者同様、医師にもコミュニケーションがうまくない人も当然います。合わないなあと思っていても、心を開いて投げかけてみると、案外いい先生だった、などという話はよくあるだけに、患者も、「えいや!」と自ら一歩踏み込む勇気も時には必要です。節度ある厚かましさは医療において大事な要素だと私は思います。

と、偉そうに書いている私ですが、しゃべる仕事をしていながら、自分のことを聞くのは苦手です。なので患者として質問するのは得意ではありません。医療現場での患者は、「素」になるので、質問できなくなる現象は起こりやすく、私もまさにそうでした。

とはいえ特に入院中などは、「今日はなんの質問がありますか」と笑われるほど、毎日山ほど質問してきました。それができたのも仕事モードで話していたからです。自分を客観視して、「さかゆうさんの必要な情報を得る取材」というスイッチを入れていました。

人は大なり小なりこうしたスイッチがあるのではと思います。取引先と会う時、接客の時、など、ちょっと気を遣う場面では普段と異なるスイッチが入ります。そんな公的スイッチを使うと、案外スムーズに聞けたりします。

どこを探しても「そんなスイッチないよ」という方や、余裕がなくて公的スイッチが入れられないという方は、ご家族やお友達にあらかじめ聞いてほしいことを伝えておき、代弁してもらうのも方法です。大切な話し合いの時には、まず第三者と医療者に主に話しをしてもらうと、そのやり取りを聞いているうちに、自分も自然と話に参加できるようになるからです。

そして2つ目の壁。これは聞きたいと思っていることはあるのだけれど、その質問をすることがためらわれる、そのことに触れたくないという、自分の中にある壁です。現実を直視するのは怖いことです。核心をつく質問は、口にすること自体抵抗があります。避けたい、逃げたい、聞きたくない、がん患者の多くが体験していることではないでしょうか。

がんであることや再発がわかって、その現実に向き合えるようになる期間は、人それぞれです。それはその人の病状にも大きく関わることですし、持って生まれた性格も関係するかもしれません。短期間で強く立ち向かえる人、長く後ろを向いてしまう人、誰が偉くて誰がダメなわけでもありません。自分自身の中にある壁に対しては、向き合おうと思うこと、無理なく言葉にできるまで待つこと、どちらもあっていいのだと思います。

とかく強く前向きな患者が偉いとされ、弱くいつまでもめそめそしている患者は自分をダメだと思いがちですが、私はそんな患者さんを見ると愛おしくて応援したくなります。患者としての在り方に正解などないのですから。

こうして内や外にある様々な壁が、聞きたいことが聞けない状態を作りますが、時に厚かましく、時に聞くことをストップさせながら、自分のペースでこれらの壁と向き合っていければと思います。

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