がんになっても 普通に生きる

がんについての理解 そしてがん患者への誤解をなくすために

Home » 「新聞うずみ火」掲載コラム » 健康食品への過度な期待は禁物

健康食品への過度な期待は禁物

calendar

reload

健康食品への過度な期待は禁物

今、水素水が流行っていますが、あれは何の効果もないようです。周りで飲んでいる人にも、「ニセ科学だよ」と伝えていますが、生成器まで買って毎日飲んでいる人は、なかなか聞き入れてくれません。「私はこれで調子がいいからいいの」と不快な表情をされる始末です。まあ、それで快調だと実感できるならいいのですが、結構高いので、私などはもったいない気がします。この手のものはいったん信じると、周りの声が聞こえなくなる、いや聞こうとしなくなりがちです。信じることは良いことでもありますが、過ぎると怖いことにもなります。かつてお寺の取材に行った時、ご住職が、「宗教なんぞは困った時にちょっと頼る、そのくらいがちょうどいいんです。信じ込むと危険です。」と話されていましたが、何事もそうかもしれませんね。

 

「健康食品との向き合い方」(2015年8月号掲載)

6月から機能性表示食品の販売が始まり、目にする機会も増えてきました。これまで機能性を表示できるのは、特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品だけでしたが、今回新たに機能性表示食品が加わり、3つになりました。

トクホは、国が個別に審査して許可を与えたもの、そして栄養機能食品は国の規格基準に適合したものと、それぞれ国のお墨付きがありますが、機能性表示食品は国の審査はありません。企業が機能性の根拠になる情報を消費者庁に届け出ることで販売が可能になります。情報は消費者庁のウェブサイトで公開されるので、消費者はそれを見て判断しろというわけです。

トクホの販売には、費用や時間など企業側の負担が大きく、中小企業は参入しにくいところがありました。そこでハードルを下げた新制度が始まったわけです。経済が優先され、消費者はどちらかというと置き去りになっているため、私たち消費者問題に取り組む者は危惧しています。

先日も消費生活アドバイザー仲間で行っている研究会でこの問題を取り上げました。兵庫県立大学の斎藤清名誉教授に指導を仰ぎ、今販売されているトクホ商品の、企業サイトで示されている効果の根拠とするグラフを読み解きました。

食後の血糖値や中性脂肪の上昇をおだやかにすることを示すグラフだったのですが、被験者が十数人であることや、統計上の優位性が示せていないことなど、根拠とするデータがかなりお粗末であることがわかりました。

トクホですらこうしたものが含まれています。ましてや、新制度は国の審査もない状態です。情報を公開されても、もっともらしいグラフが示されていれば、一般消費者は簡単に効果があると信じてしまいます。

健康食品は、がん患者の中でも何らかの効果を期待して摂取している人が多いとされています。私の知り合いにも、抗がん剤を拒否し、代わりに高額な健康食品にすがった人がいます。「抗がん剤は嫌だけど、何かしないと心配で、副作用のないよさそうなものをと思って」と話していました。

治療がうまくいっていない、今受けている医療に不信感があるなどのがん患者は、そうした代替医療に目が向きがちです。効果はないけれど、特に副作用もなければ、選択の自由と放っておいてもいいのかもしれませんが、無駄に高額だったり、人によっては体に悪影響が出ることもあるだけに、やはり注意喚起は必要です。

そこでお薦めなのが『がんの補完代替医療ガイドブック』です。ネットで閲覧が可能です。情報はやや古めですが、健康食品や医療情報との向き合い方のヒントが得られるので、がん患者以外の方にも参考になります。

健康情報や商品があふれる時代です。選択の目を磨かなければいけませんが、まずは健康食品に過度な期待をしない、そこからだと思います。あくまでも食品、それで病や不調を治そうなどと思わず、「少しプラスになればラッキーかな」くらいの、ゆるいお付き合いを基本にしたいものです。

この記事をシェアする

コメント

コメントはありません。

down コメントを残す




関連記事