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高い薬価と医療保険制度の維持

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高い薬価と医療保険制度の維持

免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ、という画期的な薬が登場して話題になっています。どんどん保険適用対象も広がってきて、期待を抱いている患者さんも多いことだと思います。とはいえまだ手放しで喜べる状態ではありません。適用するがん種も広がってきたとはいえ、どんな人に効果があるかなど、はっきりわかっていないことも多いですし、何より薬価が高いことも問題視されました。

効果がある薬はこれからも出てくることと思います。喜ばしいことではありますが、それが今回のように高価であった場合どのように対処していけばいいのか、非常に悩ましい問題です。今、医療費削減のために様々な提案が出され始めています。今後増大することが予想される中で、恣意的に人を選別することなく医療費を抑制していくためにはどうすればいいのか、誰もが当事者だけに考えていかけなければいけません。

 

「新たな抗がん剤の課題」(2016年10月号掲載)

免疫を活性化させて治療を行う免疫療法は、手術、放射線、抗がん剤の三大標準治療に続く、第4の治療法になるのではと研究が続けられてきましたが、これまで十分に確立された治療効果を得られていませんでした。そんな中出てきたのが免疫チェックポイント阻害薬、オプジーボです。

免疫は異物を排除する役割を担っていますが、過剰な攻撃を続けたり、正常な細胞を攻撃しないよう、ブレーキをかける仕組みも持っています。そしてがん細胞はこのブレーキを強くすることで攻撃から逃れているとされます。免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキを外して免疫の働きを復活させ、がん細胞を攻撃しようとする、これまでにない発想から生まれたもので、効果もすでに立証されています。

2014年にはまず、悪性黒色腫の一部で保険適用され、さらに2015年には肺がんの一部、さらに今年腎がんの一部にも使えるようになりました。また近々血液がんの一部にも承認されるようで、適用範囲が広がってきています。

一方で、一か月300万円ほどかかる高額な薬であることが問題視されてきましたが、来年2月に薬価が50%引き下げられることに決まりました。効果のある薬と薬価の問題が今回クローズアップされましたが、こうした問題は今後も起きてくることだけに、引き続きの議論が必要で、私たち一人一人も考えていくべき問題です。

単純に薬価を下げるだけでは、製薬会社の新薬開発に対する意欲の芽を摘むことにもなりかねません。かといっていくら効果があっても、あまりに高いとなると、今の保険制度を維持できなくなってしまいます。

そんな中、先日テレビで、オプジーボの院内廃棄という視点に着目した番組がありました。細菌感染を防ぐため、一度開けた瓶の薬は、少ししか使わなくても残りはすべて廃棄されるといいます。これが大きな無駄になっているのでは?という投げかけでした。高い薬だけに、無駄が多いとそれだけ無駄な費用を増大させます。

番組では、無菌室など設備さえ整っていれば、残りの薬を利用することも可能だという専門家の見解も紹介していました。高騰する医療費問題は、見えやすいものだけをターゲットにしがちですが、こうした隠れた部分にまで広く切り込んでいく必要があると感じました。

最後に、オプジーボは画期的な薬ですが、当然副作用もあるため、どこでも簡単に治療を受けていいものではありません。すでにこの薬の定められた用法・用量を守らず治療したクリニックで、重篤な副作用や死亡例も出てきています。

今年7月、日本臨床腫瘍学会がホームページでオプジーボに対する注意喚起を行いました。そこには「有効かつ安全に投与できる要件を満たす施設・医師のもと適切な投与量、投与方法にて受けてほしい」と書かれています。

ネットでこの薬を扱うクリニックを検索すると、今も「少量ずつの投与だから安全」と書いているところが存在します。多くの専門家が「そんな量では効果がない」と主張しています。治療に際しては、患者も十分気をつけたいところです。

 

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