「いよいよがんゲノム(遺伝子)医療が本格的に始まる」今がん治療に行き詰まりを感じている方などは特に期待していることと思います。
がんゲノム医療とは、遺伝子を広く解析してその人に合った抗がん剤を選ぶもので、治療効果も高いといわれています。
今年の「日本臨床腫瘍学会」で、武藤学さん(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学教授)から、がんゲノム医療の現状や課題について聞くことができました。
どんどん進んできているのに、あまり知られていないこの新しい医療について、これから何回かにわけて書いていこうと思います。
今年4月から先進医療としてがんの遺伝子検査が始まりましたが、これは誰でも受けられるわけではありません。
ほとんどのがんには、標準治療が推奨されるため遺伝子検査の対象者は限られます。例えば「原因不明のがん」や「希少がん」そして「標準治療で対応できなくなった」患者です。
現在検査は基本自費。料金は病院によってばらつきがありますが、50万~100万円と高額です。2019年度からの保険適用を目指しています。
とはいえ治療法がない患者なら「何とかして受けたい」と思うことでしょう。ところが検査を受けた人の60%近くは治療法が見つかるのに、その多くが治療できないというのです。
治療薬が見つかっても、日本では承認されていなかったり、自分のがんでは使用が認められていない適応外使用となるなど、治療薬が使えない場合が多いからです。
こうなると次は治験に参加することを勧められます。ところが「すでに終了している」「患者の状態が悪く参加できない」などの壁に突き当たります。その結果、最終的に治療に進める患者は1%程度となります。
武藤さんはいいます。
「100人検査をして治療できるのは1人。この現実を知ってほしい」
遺伝子検査の対象者は、今の医療で効果的な治療法がない患者です。それだけに遺伝子検査は最後の砦でもあるわけです。高額な費用をかけて臨む患者の「治療したい」という思いは強いだけに、「できない」ことへの失望は大きくなります。
新しい医療で治療薬が見つかっても治療ができないのならば、患者にとってはこれまでと何ら変わりがなく、逆に希望が消えることで二重の苦しみを味わうことにもなりかねません。
こんな状態の遺伝子検査に意味があるのでしょうか。続きは次回に。
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