「相手に突然不満をぶちまけられて驚いた」という経験はありませんか。実は私、つい最近ぶちまけたんです。
自宅のキッチンを入れ替えることになりました。リフォーム会社は友人の紹介。そのせいか担当者は、妙に気合いが入っていて、こちらが思ってもいないリフォーム案を次々出してきます。
「この壁をとりはらえば、こんなに変わりますよ」
「このカップボードを新しくすると、すっきりします」
「照明もオシャレなものにして」
本来ならまだまだ使える年数のもの。不具合があったので、しかたなくキッチンを交換するという経緯は話していました。折に触れ「シンプルに」という希望も伝えてきたのに、何だか大改造する方向に誘導されます。紹介してくれた友人の手前もあって、波風立てず、勧められるままに計画を進めていきましたが、違和感はどんどん膨らみます。「これ、あなたの家ではなく、うちの家のリフォームだよね」
いよいよ契約となった時、意を決してこれまでの進め方への不満を、すべてぶちまけました。喜んでもらっていると思い込んでいた担当者は、かなりのショックを受けていました。担当者も落ち込んだでしょうが、ぶちまけた私も相当疲れたのです。
私はしゃべるのが仕事。押し切られても押し戻す強さは持ち合わせているつもりですが、遠慮を積み重ねているうちに、身動きできなくなってしまいました。振り返ると、担当者と私の間で、妙な支配、被支配の関係ができつつあった気がします。
この関係は、一方が「まあ、いいか」と小さな我慢を繰り返すうちにできあがります。気づいた時には、支配関係にあらがうことが難しくなります。でも不満はたまり続ける。ある日突然、予想外の人が怒りを爆発させるのは、このアンバランスな関係が底辺にあるのではと思います。
リフォーム会社の担当者と顧客の私でいうなら、一見顧客である私の方が強いように思えます。けれどリフォームという専門分野では、プロとアマ。プロ側の姿勢次第では、支配、被支配の関係を生み出します。
医療現場でも、プロである医療者と患者の間は、支配、被支配の関係になりやすいものです。医療者からは良好な関係に見えていても、患者本人は、言いたいこと、聞きたいことをすべて出せていなくて、「なんだかなあ」を常に抱えていることも多いからです。それが、再発など、重大な局面に不満となって出てくるのだと思います。
こうしたことは、プロとアマの間だけでなく、普通の人間関係にも起こります。
知人は、ボス的ママ友との関係に悩んでいました。聞くと、彼女が一方的に我慢をしているように思えます。こちらの予定などお構いなしに突然やってきて、長々愚痴をこぼすなど、相手の気まぐれに振り回されているのです。
相談を受けた私は、即座に「付き合いをやめましょう」と伝えました。もう子どもも大きくて、関係を切っても問題はないと思ったからです。けれどここからが長かった。なかなか断ち切れなかったのです。長年の付き合いの中で、彼女とママ友との間には、支配、被支配の関係ができあがっていたからです。
私がリフォームの担当者になかなか不満が言えなかったように、彼女も関係を絶つには、付き合いの長さに見合った時間が必要でした。数年かけてようやく断ち切ると、うそのように心が晴れやかになったといいます。もっと早くに切ればよかったとも。
こうしたことが起こりやすい関係性はたくさんあります。上司と部下。先輩と後輩。親子もそうかもしれません。相手よりも経験や立場など優位な位置にいる時こそ、相手の隠れた気持ちをすくいとる努力をしていかなければいけません。優位に立っている側は、相手の反論がないことを「同意」と勘違いしやすいからです。人として対等な関係は、意識しないと保てないものです。
私も年を重ねてきたので、優位な立場になることが多くなってきました。誰かを支配することがないよう、意識していかなければと思っています。