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「断らない」の裏側で

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「断らない」の裏側で

救急車には、よくお世話になる一家でした。貧血で意識を失い階段から落ちた私、脳出血で倒れた父、交通事故にあった姉。

夜間の救急外来も子どもが小さい時にお世話になりました。母の急な入院でバタバタしていた時のこと。1歳の子どもが、テーブルに置いた父の睡眠薬を口に入れたようなのです。主治医からすぐに救急に行くよう指示され、処置をしてもらいました。救急センターがあって助かりました。

私が今住んでいる神戸市の中央市民病院は、全国の救命救急センターの中で最も診療体制が充実していると、4年連続で評価されました。

昨年はここに夫がお世話になりました。傷口から細菌が侵入し、皮膚の深い組織が炎症を起こす、蜂窩織炎(ほうかしきえん)になったからです。ただれた足の皮膚から感染したようです。足が痛いと言い出してから数時間後には熱が出始め、39度に達したため、通院していた皮膚科に連絡しました。そのまま皮膚科に行くつもりが、「うちでは対処できない」と言われ、救急センターへ。

週末の夜の7時過ぎ。すでに数人の患者がいて、その後もひっきりなしにやってきます。救急車で運ばれて来た人、自力で来た人。子どもに若い女性、高齢者と年齢もさまざま。

自力で来た人は、看護師がまずは症状を聞き取り、該当する科に振り分けます。夫は皮膚科に案内されました。担当の若い医師は、皮膚科は不慣れな様子。「この先生で大丈夫かな」と心配になりましたが、専門の医師と相談したと聞き、安心しました。

初期診療は救急科の若い医師が担当しますが、病棟には各科の専門の医師がいて、指示したり、時には診療するシステムになっているそうです。

夫は抗生物質の点滴を受けることになりました。治療方針が決まるまで1人廊下で待っていた付き添い家族の私も、ようやくベッドの部屋に案内されました。その部屋には、数人の医療者のデスクと患者用ベッドがいくつかあって、どのベッドにも患者がいました。

隣の高齢女性は、昼間にかかりつけの医師に診てもらったとか。「大丈夫と言われたけど心配で」と話していました。救急センターに来る必要はないのになあと思えます。そんな患者にも、担当医師は親切で、丁寧に話しかけていました。

神戸市中央市民病院は「断らない救急医療」をモットーにしています。24時間年中無休。医療を受ける側からするとありがたい存在なのですが、先の高齢女性のように、明らかに救急に来る必要がなさそうな人もいたのが気になりました。

緊急性がない軽症者が気軽に救急センターを受診することが問題になっています。平成28年度の消防庁データによると、救急車で搬送された人のうち、49.8%は、軽症者。神戸市の救命救急センターでも、今の時期は単なる風邪でやってくる人も多いそうです。こんな状態でいいのでしょうか。

医師も労働者

 勤務医の全国的な労働組合である全国医師ユニオンが、先頃「勤務医労働実態調査2017」の最終報告を発表しました。救急科のひと月の時間外労働は、過労死ラインの80時間を超える94.4時間。当直(通常の診療時間外である夜間や休日の勤務)回数も平均2.3回の中、救急科は5.2回と最も多い。

ちなみに、労基法上、「夜間に従事する業務は、軽度の、又は短時間の業務に限ること」とされています。ところが、当直の内容を「通常業務と変わらない」とする割合が34.5%もあり、中でも救急科は、87.5%と飛び抜けて高く、当直とは言えない業務量をこなしています。

さらに当直の翌日も通常業務を行っている割合が高いのです。つまり、通常業務→当直→通常業務で、30時間を超える連続労働を行っています。

「医師も大変だなあ」と人ごとのように思うかもしれませんが、この現状は、医療を受ける私たちにも大いに関係します。こうした過酷な勤務は集中力や判断力を低下させ、医療ミスを増やしかねないからです。実際7割の医師が「ミスが増える」と指摘しています。

今回の調査では、勤務医の4割が「健康に不安を持っている」とも回答しています。患者の病を診ることで医師が病になっていては本末転倒です。

さらに診療科を選択するにあたって、労働条件を考慮する若手医師が急速に増えている現状もあります。当然労働条件の悪い救急科は避けられます。このままでは「救急時に診てもらえない」なんてことも起こってしまいます。

今議論されている医師の働き方改革を実効性あるものにしていくことが何より大事なのですが、医療を受ける側にもできることがあるのではないでしょうか。

必要のない利用を控えるのもその一つ。ただ、そうは言っても急病時は「救急に行くべきか、明日まで待てばいいか」判断できないことは多いものです。

そんな時、利用できるのが救急安心センター(救急相談センターと呼ぶところも)と呼ばれる相談センターです。#7119に電話すると、受診の必要性や医療機関の案内などのアドバイスがもらえます。次回はこのセンターについて。

 

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