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がんゲノム医療~使える薬は増える?~

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がんゲノム医療~使える薬は増える?~

前回はがん遺伝子検査が患者の治療に結びついていない現状について書きました。治療薬がみつかってもその薬が使えないということが問題でした。

新しい薬は、製薬企業が有効性や安全性を治験で確認してから国に申請し、その後の審査で合格して初めて使えるようになります。

治験は3段階に分けて行われます。
①1相(いっそう)試験。人での安全性を少ない人数(健康な人や患者)で確かめます。
②2相試験。もう少し参加する患者数を増やし、薬の適量なども決めます。
③3相試験。多くの患者に使用し、実際の治療に近い形で薬の有効性や安全性を確かめます。

③がもっとも多くの患者を集めなければならないのですが、患者数の少ないがんでは、国内だけで治験に必要な患者数を集めることが難しくなります。試験期間も長くなり費用もかかって、開発が断念されることが多くなります。そのため患者数の少ないがんは使える薬がなかなか増えないのです。

そこで新しい制度が作られました。
一つが「条件付き早期承認制度」です。

重篤な病気で、患者数が少ないなどの場合は、③を飛ばして申請ができるというもの。これは製薬業界からの強い要望で作られた制度です。③が省略できれば、製薬企業の費用負担も少なくなるため開発が進み、使える薬が増えていくと期待されています。

この制度は患者に投与を始めたあとに効果や安全性のデータを集めることが条件になっていますが、すでに承認されている薬に対して、きちんとデータが収集、確認されるのか。また想定外のことが起こった場合はどう対処するのかなど、疑問点が多い制度でもあります。

もう一つが「先駆け審査指定制度」です。

世界に先駆けて日本で承認申請を目指す薬や機器などは優先的に審査するというもの(いろいろな条件あり)。画期的な薬や機器をどの国よりも早く実用化することが目的です。この制度も承認審査の期間を大幅に短縮することができます。ただこれまでにない早さで承認されていくため、新薬の情報が少なく、現場では戸惑いもあると聞きます。

私たちが知らない間に、開発スピードを上げる制度が次々導入されています。病に苦しむ人に早く薬を届けるため、スピーディーに承認されることは大事です。ただそのために「安全性」や「有効性」がおろそかになっては困ります。

スピード化は患者に恩恵をもたらすのか、医療ビジネスに加担するだけになるのか。今後よく見ていく必要があります。

 

【ドラッグラグ神話】
海外で使われている薬が日本で使えるようになるまでの時間差をドラッグラグと呼びます。ドラッグラグの要因は審査のスピードの遅さだけをイメージしがちですが、治験にとりかかる遅さの方が大きな要因でした。日本は治験を行う環境が整っていなかったからです。
けれどそれも過去のこと。審査や治験のスピードは早まり、もはや5大がん(胃、大腸、乳、肝臓、肺)においてラグはなくなったともいわれます。
医療情報は健康な時にはなかなか興味を持てないものです。そのため何らかで得た古い情報が神話化されて頭に残り、それが今も続いていると思いがちです。
ドラッグラグ神話も更新しなければいけない情報の一つです。

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