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がんとわかって心はどう動くのか

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がんと告知されると大きなストレスがかかります。悲しみや不安などいろいろな感情がおそってきて、「眠れない」「食べられない」状態になることもあります。けれどそれは「体を守るために必要な反応」なのだそうです。

今年の臨床腫瘍学会で精神腫瘍科の小川朝生さんから「がん患者と家族のこころのケア」と題した話を聞きました。がんとストレスの関係を客観的に見つめ直すことができ、過去の心の揺れは当たり前の反応だったこと、そして自分が弱いからでもダメだからでもなかったことが再確認できました。

小川朝生さんは、国立がん研究センター東病院で、がん患者や家族の精神面のケアを行っています。表情や声に包み込むような温かさがあって、この先生に救われた方も多いのだろうなと感じる方でした。

がんの告知から起こる心の変化

がんと告知されると、8割、9割の人が眠れない、食べられないなどのストレス反応が起こり、その状態が1,2週間続きます。治療が始まるまでの期間は最も不安が高まる時期です。

私も告知後は病気について調べまくり、あれこれ考えすぎてしんどくなりました。当時、新しい仕事に取り組み始めていたので仕事先に迷惑をかけられないと、「あれはどうしよう」「これは断るべきか」そんなことばかり考えました。

先の見通しが立たないこの時期は、多くの人が不安から仕事や社会活動を絶とうとします。「治療に全力投球します」という方はとても多いのだそうです。けれど仕事も人間関係も慌てて絶ってはいけないと小川さん。心のメンテナンスで大切なのはこれまでの生活リズムをできるだけ崩さないことだそうです。「しんどいと思うなら、やめるのではなくひととき休みましょう」とアドバイスされていました。

そして周りの人は患者の思いを聞いてあげることが大事になります。落ち込んだり悲しんだりしていても、多くの人はそのうち自分のペースを取り戻します。ただ思いを黙って聞くだけでいいのです。ついやってしまうアドバイスや善し悪しの判断は、患者に負担を与えるので要注意です。

治療が始まると、やるべきことに追われ不安はなくなっていきます。小川さんは落ち着いているこの時期に、家族といろいろ話し合っておくことを勧めていました。

そして治療後。再び不安は高まります。病院に行く回数も減り、治療したあとの体や再発の心配などが出てくるからです。治療後半年はストレスの山場になるそうです。

治療後のすれ違い

治療を終えてから家族との間に溝ができたという話を何度か聞きました。治療が終わっても、患者はさまざまな不調と向き合います。リハビリも続くし、後遺症も出てきます。これまでやれていたことができなくなることさえあります。

患者は今までとは異なる「新しい私」を受け入れるために葛藤し、心が安定しない日々が続きます。一方家族は治療が終われば一段落したと安心します。ここにギャップが生まれるのだと思います。

患者は家族に心配をかけまいと不安や愚痴を封印しがちですが、「黙っていても気持ちが通じる」というのは幻想でしかありません。黙っていたら心はすれ違います。

私は「いつになったら腕が上がるようになるのか」「腕がだるくてパソコン作業が進まない」など、よく愚痴っていました。

口にすることで患者が今何を思っているかが家族に伝わります。治療内容だけでなく、気持ちの共有も闘病には大事です。遠慮せず思っていることをはき出していきたいものです。

赤裸々にがんを公表する人を見ると、強いなあと思います。病に気丈に立ち向かう姿はなんだかかっこよくて、落ち込んでいる自分はダメだなあと思ってしまいがちですが、そんなことはないのです。

落ち込んだり眠れなくなることは、立派な防御反応です。いつか暗闇から抜け出せる時がくるはず。今、苦しんでいる方はどうぞ安心してください。あなたは弱くもダメでもないのですから。

次回はほうっておいてはいけない、専門家に診てもらう必要がある状態についてです。

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