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がんについての理解 そしてがん患者への誤解をなくすために

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あなたや私もうつになります

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『がんとわかって心がどう動くのか』で、ストレス反応は誰にでも起こり、多くの人が時間とともに乗り越えると書きました。けれど中にはうつになる人も出てきます。

「頭が心配事でいっぱいになる」「家事や仕事が手につかない」「食事の味がしない」などの症状が続くようなら心療内科・精神科を受診する必要があります。けれど自ら受診するにはハードルが高く、悪化させてしまう事例も多いようです。

身近な人がうつになりました。様子がおかしいので駆けつけた時はすでに動けない話せない状態で、まるで別人のようになっていました。あとから知りましたが「自ら命を絶つ一歩手前」だったそうです。

人をここまで変えてしまう、うつの怖さを目の当たりにし、周りにいる人が早く変化に気づいて治療につなげることも大事だと実感しました。どういう変化に注意が必要なのでしょうか。

国立がん研究センター東病院で、がん患者や家族の精神面のケアを行っている精神腫瘍科の小川朝生さんは、「落ち込んだ状態が続いている」「それまで興味を持っていたものに関心を示さなくなる」などの症状があれば、専門医に相談する必要があるといいます。

ただ周りが早めに気づき受診を勧めても本人が拒絶する場合も少なくありません。心療内科・精神科はまだ多くの人にとって行きづらい場所だからです。社会の偏見や誤解が続いてきたからだと思います。

がんもそうなのですが、社会復帰した時、周りが気遣って病気の話題を避けるため実態が伝わらない、また多くの患者がいるのに表に出てこない、なども理解が進まない要因だと思います。

ある会合でうつが話題になったことがありました。6,7名いたメンバーの半数以上が当事者や経験者でした。「今も薬を飲んでいる」「うつで休職したことがある」「何度もくり返した」など次々にカミングアウト。身近にこんなにもいたのかと驚きました。

うつを「気持ちの持ちよう」だの「弱いから」だのと、未だに精神論で語る人がいますが、そういう理解不足が周りにいる多くの当事者を傷つけ、治療や回復の妨げになっています。

私がかつてお話を伺った心療内科の医師は「うつになった人と同じ状況に置かれたら、誰でもなるものなのです」と話していました。専門家であるその医師も経験者でした。

長時間労働や人間関係など、現代は精神的にしんどいことがいくつも重なることが珍しくありません。そんな状況でも「私はならない」と言えるでしょうか。

がん患者も病気のこと以外に不安なことを抱えている人はいることでしょう。そんな人は専門医に相談してほしいと思います。信頼できる専門医はじっくり話を聞いてくれます。

うつの治療で大事なこと

うつ患者は睡眠と食事が乱れていることが多いようです。そのため心療内科・精神科では、まず生活を整えるための指導をします。たとえ休職中であっても、朝は決まった時間に起きて着替え、朝日を浴びる。こうして生活リズムを整えることで回復する人も多いといいます。

小川さんは、食べられなくても、夜はせめて汁物だけでもとって、空腹状態で寝ないようアドバイスされていました。睡眠のために大事なことだそうです。また、ペース作りの大切さも話していました。少し元気になった時に「やれるだけやってしまおう」と頑張りすぎて疲労し、また自信をなくす。このパターンも多いとか。ギアを一つ落として、やるべきことの7割ぐらいにとどめ、「明日できることは今日やらない」ことも大事だといいます。

うつは誰でもなる病気。受診が必要。せめてこの2点だけでも広く理解されなければと思います。

そして少し良くなれば、社会生活を送りながら回復させていくものです。再開した活動を軌道に乗せていくためには、周りの見守りやサポートは欠かせません。けれど今のような無理解な社会では、せっかく復帰をしてもまた再発してしまいます。話題の「生産性」でいうなら、こんなもったいないことはないのです。

いろんな人が、その人のペースで生きられる社会こそが健全な社会だと私は思います。そのためにもまずはうつの正しい理解からなのです。

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